肌トラブル&対策 : 接触性皮膚炎(カブレ)
皮膚の免疫
私たちの周りにはカビやウィルス、細菌など様々の刺激物質が無数存在しています。
これらの病原菌が体内に入るには丈夫な皮膚を通過しなくてはなりません。
角質細胞が何層にも重なった表皮は私たちが思っているより丈夫な器官です。
また、角質細胞は毎日ある程度まとまってシート状に剥がれ落ちます。その時に、侵入しようとした微生物なども一緒に剥がれ落ちていきます。
そして、また、表皮深層から新しい角質層細胞が徐々に重なってきます。
しかし、ケガをしたりすると大切な角質層が損傷して、一時的に角質細胞が損なわれる場合があります。
どんどん病原菌が体内に侵入してきます。
もし、角質層だけが体の防御器官だとしたら、私たちは簡単に死んでしまうでしょう。
そうならないように、私たちの体は様々な防衛の仕組みをもっています。
それを『免疫』といいます。
免疫とは?
免疫とは『自分以外のものを体内から排除するシステム』です。
私たちの体(自己)と、それ以外のもの(非自己)を区別して、非自己を排除して自己を守るのが免疫の働きです。
免疫には『自然免疫』と『獲得免疫』と、大きく2つの働きがあります。
- 自然免疫
- 自然免疫は非特異的な免疫と考えられ体内に侵入してきたウィルス、細菌、カビ、寄生虫などの非自己に対して、血清や体液中に含まれる補体やリゾチームと呼ばれる特別な酵素タンパク質、あるいは肥満細胞(マスト細胞)、多型核白血球、マクロファージやNK細胞などの細胞(細胞性)がそれぞれ単独で、あるいは共同でこれらを排除しようとします。
- 獲得免疫
- 自然免疫で対処できない場合には、獲得免疫と呼ばれる別の免疫が働きます。
獲得免疫は体内に侵入した非自己である侵入物(これを抗原といいます)だけを認識するリンパ球が、体の中にあることにより特異的に行われる免疫反応です。
一度認識された抗原は、それを認識したリンパ球が体内にあることで、恒久的に記憶されます。
そして、再度、同じ抗原の攻撃を受けたときには、直ちに、認識したリンパ球が活性化され、抗原を排除しようと働きます。
アレルギー
免疫は私たちの体を守ってくれる大切な仕組みです。
しかし、逆に体にとって不利に作用することがあります。
これが『アレルギー』と呼ばれる反応です。
アレルギー反応は4つのタイプに大きく分かれます。
Ⅰ型(即時型反応)
抗原が体内に侵入すると、短時間で反応が見られます。
この抗原物質は一度の出会いではアレルギーは起こりません。
しかし、その最初の出会いでできた抗体のうち「IgEタイプ」の抗体が「マスト細胞」などの特別な細胞と結合してしまいます。
マスト細胞はとても薬理作用の強いヒスタミンを細胞内に抱え込んでいます。
そこに、再度抗体が侵入してくると、マスト細胞が壊れ、中のヒスタミンが急激に放出され、全身にパニックを起こします。
時には死にいたるときもあります。
Ⅱ型(過敏症)
IgEやIgMなどの抗体が細胞膜上あるいは組織上の抗原に結合すると、この抗体に対してマクロファージ(貪食細胞)などが攻撃することで症状が現れます。
Ⅲ型(アルツス反応)
細胞膜表面上あるいは組織上の抗原に対して抗体が反応することで起きるアレルギー反応で、液性の抗原に抗体が結合し、免疫複合体を作ります。
この複合体が体内に流れ、組織に沈着することで誘発される反応です。
Ⅳ型(遅延型過敏反応)
細胞性の反応で、ツベルクリン反応や接触性過敏症などがこの反応に入ります。
抗原とリンパ球の反応で誘発されるアレルギーですが、抗原の提示細胞やマクロファージ(貪食細胞)など免疫に関与する細胞が関わった反応です。
反応が強く現れるのが抗原が侵入して24~48時間後のため遅延型過敏反応とも呼ばれています。
皮膚のアレルギー
化粧品による皮膚トラブルで問題になるのは、Ⅳ型の遅延型の接触過敏症です。
皮膚に抗原(非自己)物質が侵入しようとすると、
- 表皮にあるランゲルハンス細胞と呼ばれる抗原提示細胞に取り込まれます。
- 抗原を取り込んだランゲルハンス細胞は、リンパ管を通って特定のリンパ節に移動します。
- リンパ節でランゲルハンス細胞は抗原と特異的な反応をするリンパ球のTリンパ球に認識されます。
抗原がTリンパ球に認識されるかされないかは一人一人違いますから、このことがアレルギーを起こすか、起こさないかの違いになって現れます。 - 抗原を認識したTリンパ球は“インターロイキンⅠ”という分泌物を放出します。
放出されたインターロイキンⅠの刺激を受けてT細胞のクローンを次々と作り出します。
増殖したT細胞は血管を通って皮膚に移行します。(感作の成立) - 再度抗原が侵入してきます。
- T細胞が抗原を認識すると、アレルギー反応(接触性皮膚炎)が誘発されます。
接触性皮膚炎
皮膚の炎症の主な兆候
皮膚そのものは柔軟な組織ですが、その抵抗力は強固なものです。
が、抵抗力が減退したり、強い外的刺激を受けた場合に、バランスが崩れ変調をきたして、結果炎症を起こします。
これは有害な刺激に対する一種の防衛反応でもあります。
炎症の主な兆候は4つあげられます。
- 発赤(ほっせき)皮膚が赤くなる
- 腫脹(しゅちょう)皮膚がはれる
- 灼熱感(しゃくねつかん)皮膚がほてる
- 疼痛(とうつう)皮膚の痛み
接触性皮膚炎(カブレ)
皮膚炎には様々なタイプがありますが、化学物質やその他の異物が直接的に触れたことにより起こる“接触性皮膚炎”と呼ばれ、一般には“カブレ”ともいいます。
- カブレの症状は、外的刺激に対する防衛の最前線とも言える表皮の神経終末器が感知することから始まります。
- 神経からの情報を得て、血流が活発になります。
真皮乳頭体内部に絡み合っている毛細血管が充血します。
血流量が増え、盛んに活動しているので、現実的に赤くなって見えます。
しかも、局所的に皮膚温が上昇してほてった感じがする。 - 血流の増加にともなってリンパ液も増えてきます。
皮膚表面は腫れてきて腫脹をきたします。
この状態が続き、外的刺激因子の侵入が特に多い部位に血管内からの血漿成分やリンパ液が集中して、細胞の間に溜まると、水泡ができることもあります。 - 白血球が集まってきて刺激因子を貪食したり、破壊するので刺激因子は死滅し、その残骸が膿みとして排出されます。
- この一連の皮膚組織と外的刺激因子との攻防の結果として表皮細胞が一部は介されることがありますが、再生作用により表皮細胞は徐々に産生されてやがて回復します。
一次刺激性接触性皮膚炎とアレルギー性接触性皮膚炎
一次刺激性接触性皮膚炎
一次刺激性接触性皮膚炎の因子となる物質を“接触毒”といいます。
例えば、作用の強い酸やアルカリなどの化学物質・毒性のある植物や昆虫、肌質に合わない化粧品、有害な太陽光線などを言います。
そのもの自体が皮膚に強い刺激を与える物質であり、量が多かったり、高濃度であったり、接触時間が長かったりすることで、皮膚の抵抗力が外的な刺激に負けてしまうと、誰でもカブレを起こします。
化粧品によるカブレは個人差が大きく、化粧品に含まれる香料、油脂、色素、石油系界面活性剤などは、刺激因子となる可能性があります。
一般的には、メイクアップ化粧品より皮膚に密着するクリームや乳液、ファンデーションの方がカブレを起こしやすいと言えます。
化粧品に含まれている様々な物質が外的刺激の因子になる可能性がありますが、中でも、ある特定の物質だけに過敏な反応を示すことをアレルギー反応を起こすといいます。
そして接触物質によりアレルギー反応を生じた皮膚炎を“アレルギー性接触性皮膚炎”と言います。
アレルギー性接触性皮膚炎
刺激物質(抗原)に対応する抗体をもっている特別な人にのみ起こる反応です。
接触してから24~48時間経過してから症状が現れることと、一度の接触では起こらずに刺激が何度か繰り返されているうちに起こるので、原因が思い当たらないことも多々あります。
刺激物質(抗原)は、量や接触時間によっての反応ではなく質的反応です。
先天的なアレルギー体質により反応を起こすこともあります。
また月経前後、妊娠期、更年期などホルモンバランスが崩れることによりカブレが起きやすくなることもあります。
カブレの治療のために
一次刺激性接触性皮膚炎でもアレルギー性接触性皮膚炎の場合も、治療の原則はまず原因物質の確定です。
一次刺激性の原因物質よりもアレルギー性接触性皮膚炎のアレルギー反応を起こす原因物質を特定することがむずかしく、化粧品や金属製のアクセサリー、化学繊維の下着類、使用している軟膏、生活の周りにあるものが原因となる可能性があります。
原因となりうる疑いがあるものを全て遠ざけて検査する必要があります。
身のまわりのアレルゲン一覧表
アレルギーを起こす原因となる物質をアレルゲンといいます。
自分の体の成分以外の異物はすべてアレルゲンとなる可能性がありますが、普通はごく一部の人にしか害を及ぼしません。
接触性アレルゲン
動物 | 犬・猫・牛・馬・ニワトリ・ウサギ・鳥などの毛や唾液 | |
---|---|---|
昆虫 | 家ダニ・クモ・蚊・ノミ・シラミ・毛虫など | |
微生物 | 細菌・カビ・ハウスダストなど | |
植物 | 杉・赤松・黒松の花粉・ウルシ・ブタクサ・銀杏・銀杏・はぜ・つつじ・桜草・げんのしょう・チューリップなど | |
化学薬品類 | 洗剤・外用薬・化粧品・パーマ液・入浴剤・歯磨粉・毛染剤・香料・塗料・防カビ剤など | |
その他 | 衣服・毛皮・靴下・下着・生理用品・ビューラー・時計バンド・めがね・寝具・カーペット・ゴム手袋・金属アクセサリー(ネックレス・イヤリング・指輪など) |
食品アレルゲン
魚介類&海草 | 海老・かに・さば・びり・まぐろ・いわし・さけ・あじ・かつお・たら・ます・にしん・さんま・はまぐり・あさり・しじみ・かき・いか・たこ・昆布・のり・ひじき・わかめなど | |
---|---|---|
肉類 | 豚肉・牛肉・鶏肉・羊肉・ソーセージ・ベーコン・ハムなど | |
卵 | 鶏卵・うずら卵・マヨネーズなど | |
乳製品 | 牛乳・チーズ・バター・パン・ケーキ・ヨーグルトなど | |
穀類 | そば粉・とうもろこし粉・もち粉・小麦粉など | |
野菜・豆類 | ほうれん草・れんこん・ごぼう・ふき・うど・たけのこ・くわい・くり・山芋・わらび・ぜんまい・きのこ・ねぎ・ピーマン・セロリー・おくら・アスパラガス・トマト・大豆・あずき・そら豆など | |
果実 | いちご・もも・いちじく・あんず・バナナなど | |
刺激物 | わさび・コショウ・からし・しょうが・カレー粉など | |
アルコール飲料 | 日本酒・焼酎・ウイスキー・ワイン・ビールなど | |
その他 | チョコレート・とうふ・ちくわ・かまぼこ・しょう油・ソース・味噌・こうじなど |