肌トラブル&対策 : 老化肌
実年齢と肌年齢
年齢を重ねることにより生じる様々な変化を加齢(エイジング)といいます。
加齢は四肢や内臓ばかりでなく、肌にも起きる現象です。
ハリ・弾力がなくなったり、小じわやシミができるなどの変化が現れます。
スキンケアや生活環境などにより現れ方が異なります。
肌の老化を招いてしまう原因
- 間違ったスキンケア
- 長時間の低温・低湿
- ストレス
- 睡眠不足
- 日常生活での不摂生
- 長時間の紫外線照射
- 喫煙・飲酒
加齢による肌の老化は逃れることのできないものですが、老化を促進する要因を一つひとつ取り除くことで、少しでもブレーキをかけることは可能です。
そういった努力が『美しく老いる』ことへつながっていきます。
※実年齢(実際の年齢)と見かけの年齢(肌年齢)の幅は年齢が高くなるほど差は広がります。
実年齢より老けて見える人は、紫外線をあびる機会が多かったり、正しいスキンケアを行っていなかった、長い間病気やストレスの影響を受けたなどが要因としてあげられます。
※肌の衰えを自覚する女性は30歳代から急に増える。
皮膚の成り立ち
皮膚の老化を考える場合、皮膚の発生段階を知ることが必要です。
肌の老化を招いてしまう原因
母体で育まれる受精卵は細胞分裂を繰り返して嚢胚となります。
嚢胚は外胚葉・中胚葉・内胚葉によって形成されています。
皮膚は外胚葉と中胚葉からつくられます。
最初は1層の細胞が並び、薄い膜で、胎生2ヶ月を過ぎる頃には2層へと変化します。
形成としては、まだまだ不完全で、真皮層の細胞も少なく、乳頭体も形成されないので、単純な直線的な皮膚です。
出生後は胎内にいたのと異なり、外気に触れるなど様々な刺激を受けますから、血液循環が活発になり、見た目にピンク色に見えます。
この頃は、表皮がまだ薄く、色素顆粒も少ないので皮膚の透明度が高く、活発な血液循環が皮膚の色に反映してピンク色に見えます。
- 胎生3ヶ月頃で
- コラーゲン線維が発生
- 胎生4~6ヶ月
- 表皮角化が起こり、皮脂腺・汗腺・毛髪などの皮膚付属器官ができ、皮膚のおおよそが整う。
- 胎生7~8ヶ月
- エラスチン線維が発生し、乳頭体が発達して真皮と表皮の境界面が波型となり、機能面でも皮膚らしくなってくる。
- 乳児期・幼児期
- 表皮・真皮ともまだ薄い状態ですが、皮下組織は厚くなっています。(もち肌感触)
- 小児期
- 色素顆粒も増えて成人の色になります。真皮ではコラーゲン線維も増して強度が備わります。
- 思春期
- 皮膚完成
- 第二次性徴完了後
- 男性の皮膚は強靭でたくましい直線となり、女性は柔軟な曲線的になります。また、皮脂腺の分泌も活発になり、肌にうるおいが増しますが、ニキビができやすい時期でもあります。
- 20~24歳
- 表皮の水分量、真皮のコラーゲンの並び、皮下組織の脂肪量のすべてが適正で、弾力のあるみずみずしい肌を保っていられるピーク時期。
- 25歳前後
- 身体機能そのものが衰退期に入る頃から、肌の老化が始まります。
- 女性45歳前後
- 更年期障害が現れます。(男性55歳前後)
老化の過程:角質層の変化
表皮の乾燥
加齢により皮膚の分泌作用も新陳代謝も低下しますから、水分不足になり、皮膚が硬くなります。
角質層の変化、皮脂腺・汗腺機能の低下、真皮の変化などが複雑にからみあって、皮膚は乾燥し、硬くなります。
加齢にともない細胞自体が萎縮してしまい大きさがばらばらになります。
細胞の並びも不規則になりますから、細胞と細胞の間に隙間ができ、皮膚の水分が失われて保湿機能が大幅にダウンします。
※角質細胞は加齢に比例して徐々に大きくなっていきます。
老化の過程:新陳代謝の低下
表皮細胞が生まれ剥がれ落ちるまで健康な状態であれば28日間かかりますが、基底細胞の働きの低下とともに遅くなってきます。
角質層の上部から垢となって剥がれ落ちるまでに日数がかかるようになります。
新陳代謝の乱れから角化でつくられるアミノ酸を主としたNMFが減少してきます。
そうなるとNMFとともに水分を保つ役割をしている皮脂膜、細胞間脂質が新陳代謝の乱れや皮脂腺の低下から減少してきます。
老化の過程:酵素
酵素は微量ですが、生体内の反応を促進させるたんぱく質からできた生体触媒の総称であり、多種の酵素が存在しています。
体内では分解・合成・酸化・還元などの複雑な生体内の化学反応を、円滑に行うために多種の酵素がさまざまな役割をもって働いています。
酵素の働きには一定の温度とpHまたはイオンが必要とされます。
さらに、特定の物質の特定の反応においてしか作用しません(酵素の基質特異性)。
条件が整わないと、その作用を失い、新陳代謝が低下して角化の速度を大幅に低下させてしまいます。
老化の過程:汗腺
皮膚自体が水分を補うために汗があります。
汗を分泌する汗腺の機能も加齢により低下します。
これは、汗に混じっている乳酸の量が欠乏して、pH値がアルカリ性に傾いてしまうためです。
汗腺機能の低下もまた、角質層の水分不足を招き、乾燥への一因となるのです。
老化の過程:環境
アルミサッシや冷暖房の普及により屋内の湿度が少なくなっています。
アルミサッシの部屋の湿度は木製の戸や障子の家よりも20~30%低いといわれています。
また、夏の冷房は人工的な冬を作り出しているわけですから、皮脂分泌量が減ります。
さらに暑い外と屋内の寒暖の差を急激に受けるため、皮膚の温度適応が不十分となります。
真皮層の変化
真皮は膠原線維(コラーゲン)と弾力線維(エラスチン)が規則的に配列している間を、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸などのムコ多糖類で満たされ、皮膚に弾力と柔軟性がもたらされています。
加齢による変化
- コラーゲンやエラスチンの全体量が減ってきます。
- コラーゲンが細くなり、可溶性コラーゲンが減って不溶性コラーゲンが増えます。
- コラーゲンの交点にあるエラスチンも再生できなくなります。
- ムコ多糖類の中でも自分の重さの数千倍もの水分を蓄え、水分を逃さない性質のヒアルロン酸が減少します。
コラーゲンやエラスチン、ムコ多糖類の減少により、皮膚の弾力が失われ、皮膚の保水量は激減します。
この影響はすぐ表皮に影響しますから、真皮層の組織構造の質の変化はシワの発生に大きく関係するばかりでなく、皮膚の乾燥にも関わっています。
可溶性コラーゲンと不溶性コラーゲン
コラーゲンには可溶生と不溶性の2種類があります。
- 可溶性コラーゲン
- 水分吸収にすぐれ、皮膚のハリと弾力を保っているコラーゲンです。
- 不溶性コラーゲン
- 線維が硬くなったコラーゲンのことをいいます。加齢や紫外線により可溶性コラーゲンは不溶性コラーゲンに変化してしまいます。
過角化と錯角化
正常な表皮の角化(ケラチニゼーション/新陳代謝)は28日周期で行われますが、時として遅れたり早まったりすることがあります。
いずれも角化の異常で、皮膚の保湿力低下を招きます。
角化の異常は化粧品による正しい手入れで回復させることが可能です。
過角化(角化周期が遅れる)
角質層が過剰に作られたり、角質層の上層がはがれ落ちずに付着したままになっている状態のことをいいます。
角化のサイクルが乱れ、部分的に皮膚が硬くなり、皮丘と皮溝の高さの差が増し、キメが粗くなってしまいます。
錯角化(角化周期が早まる)
角質が急に薄くなると、角化日数が短縮されて、肌細胞は核をもったままの未完成な角質細胞となります。
様々な機能が未完成な角質細胞ですから、バリア機能も低下します。
錯角化はフェイスブラシやスクラブ洗顔量などの常用により起こることもあります。
線維芽細胞
皮膚のハリを保っているコラーゲンや弾力を維持しているエラスチンを作っているのは真皮層にある線維芽細胞です。
線維芽細胞は皮膚の保湿力に大きな影響を与えるヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンの産生と分解のバランスを保って新陳代謝がなされています。
成長期には分解より産生が増さっていますが、加齢ともに分解が産生を上回ってしまいます。
この線維芽細胞の活動の衰えがコラーゲンやエラスチンの減少につながり、ハリと弾力が失われていくことになります。
そればかりではなく、皮膚の保湿力に大きな影響を与えるヒアルロン酸も減少してしまいます。
また、産生能力が衰えるばかりでなく、線維芽細胞自体も20歳代後半から増殖能力が低下してくるので、老化が加速されることとなります。
肌色の変化
皮膚の色合いも加齢によって変化します。
肌の色に影響を与えるメラニン色素は15歳頃までに一度、多くなり、20歳前後で少なくなって色白になりますが、30歳頃からまた色素が増えてくる傾向があります。
従って、老化するとシミもできやすくなります。
さらに真皮の線維組織の水分減少から、肌の透明度も低下し、肌は黄色がかってくるので、一層くすんだ肌に見えます。
また、毛細血管の減少も悪影響を与えます。
血液の循環が緩慢になり、肌の血色も衰えます。
そして皮膚への栄養補給が滞り、老廃物もスムーズに運び出されなくなってしまいます。
栄養補給が途切れがちになると、肌にカサツキやシワとなって現れます。
鉄分の多い食品
血色の成分でもある鉄分は、不足すると貧血の原因にもなり、肌の血色も悪くなります。
体内では合成できないので、食品から摂取しなければなりません。
魚や肉などの動物性タンパク質やビタミンCを含む食品とともに摂ると吸収がよくなります。
- レバー
- ほうれん草
- カキ
- 卵
- 凍り豆腐
- わかさぎ
- 小松菜
- うなぎ
- ごま
- まぐろ赤味
- 大豆
- しじみ
- あさり
- ひじき
- 煮干